
海外生活12年。
手作りが好きで、二十代の頃から梅干しはこちらに来てからも作り続けています。5年ほど前からは、日本の米麹がなくても味噌が作れることを知り、手作りしています。娘がお味噌を、友達の白人の家庭の冷蔵庫の中で見つけて、驚いていました。それほどまでに日本のお味噌は、今では普通の近所のスーパーマーケットでも見かける、一般的なものになりました。
今回は、手作り納豆です。
アジアの食材店には、日本のパックの納豆は販売されています。でも、やっぱり手作りをしたくて試行錯誤してここまできました。
納豆は、パックの納豆から菌を増やさなくても、空中から取り入れることで作ることができることを、知りました。そのきっかけの動画が、こちらです。
小さな電気カーペットを購入して、早速作ってみました。
ですが、温度調整が難しいためか、納豆の糸引きが少なく、味は納豆ではあるもののあまり上手くいきませんでした。しかも、発酵するにつれて納豆臭さが部屋中に充満してしまい、作る際には毎回覚悟が必要でした。
電気カーペットで手作りする前は、藁に似ているであろうトイトイという、日本のススキに似たような植物を取ってきて、作っていました。煮た大豆と一緒に、このトイトイも入れました。ヨーグルトメーカーの容器に、空気が通るようにと少し蓋を開けながら、お湯を入れ直しては温めていました。
ホットウォーターシリンダーという、水を温めて貯めておく大きな貯湯槽が家の中にある場合があります。それがある家を借りていた際には、その上に大豆とトイトイを入れた容器を置いて、温めながら発酵させていました。
しかし、いずれの方法もイマイチ。なかなか、糸引きの良い納豆を作ることはできないでいました。
そして、今回。新しく引っ越してきた先には、コンロがありません。料理をほとんどしない、一人暮らし用の部屋です。毎日がキャンプのような、小さな卓上コンロを小さな台に置いて、料理をしなければいけなくなりました。
これではあまりにも不便なので、電磁波が嫌で今まで敬遠してきた、電気製品を購入することにしました。米国で一番売れているという、電気鍋 Instant Potです。
なかなかの優れもので、この鍋一つで、焼く、茹でる、圧力鍋として、また発酵機能もあり、温度調整ができます。
大豆を一晩吸水させ20分ほど圧力をかけて、大豆は指で潰せるほど柔らかくなりました。茹で汁を少しだけ残して、発酵温度を45℃に設定します。(42℃では、糸引きが弱かったです。)一般的には納豆の発酵時間は24時間以上となっていますが、一度6時間ほどで蓋を開けてかき混ぜ、そのまま寝て朝起きて開けてみたら非常に糸引きの良い納豆ができていました。18時間くらいだったと思います。
納豆菌を混ぜなくても、そして発酵中に常時空気を取り入れなくても、しっかりと蓋をした状態でも空気中の納豆菌はちゃんと働いてくれました。
ガスコンロと違って、ボタン一つでほったらかしにできるのは、なんて画期的なのだろうと感動していました。こうやって便利なものばかり使って、電気に囲まれた生活をしてしまうのは、、ある意味仕方のないことなのかもしれないと、思ってしまいました。
それにしても、ネバネバの正真正銘の納豆が、何年もかけてやっとできたことは、本当に嬉しい限りです。文明の利器を使って、しかもワンタッチ。
なんという、オチでしょう。今まで試行錯誤してきたのは、いったい何だったのだろうかと。
昔ながらのお醤油やお味噌を作っている場所では、見学する際に朝納豆は食べてこないでください、とよく言われます。それほどまでに、納豆菌は、強いのです。南半球の日本の反対側にある場所にさえ、納豆菌は空気中に存在しています。上の動画が撮影された、ニューヨークにも。
天然の納豆菌による納豆は、少量でも満腹感が得られます。エネルギー、たっぷりです。
条件さえ与えてあげれば、しっかりと働いてくれる微生物たち。
発酵って、本当に面白いですね。