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灰汁あらい職人さんへの敬意

昨年の7月に、事故が発生しました。

縁側の天井に3か所ほど、黒いシミが元々ありました。雨水がどこからか侵入して、シミになっているのだろうと思いました。これ以上広範囲に拡大することを恐れて、当時知り合ったばかりの建築士に相談をしたのです。

結果的に、雨漏りが起きて、天井から水が侵入してしまった。

縁側の上には、2階のベランダがあります。ベランダの防水は10年に一度くらいしないといけないから、もうその時期なのだろうということでした。そこで、お任せしたのです。

結果的に、その判断が大きな間違いの元でした。元々なかった雨漏りを引き起こされ、縁側の天井だけでなく、家の中の壁をつたって床まで水が落ちました。さらに、軒下からの高圧洗浄機の水で更なる黒いシミが拡大しました。

私は、当時日本にいなかったのです。身内に任せてしまったそれも間違いの原因でした。家庭内が、どれほど掻き乱されたことか。。建築士も、施工業者も、しばらく反省する様子はまったくありませんでした。女の私が怒ったところで、実権を握っているのは夫の方。夫の態度に、見逃してもらえると思っていたのでしょう。私は悪者になる覚悟で、本気で怒ることにしました。

その結果、保険屋を介して、元通りに修復する施工が始まることになりました。

今まで、もうゆうに10軒以上の業者と関わりました。屋根の専門業者でも、どこから雨漏りをしているのかわからずに首を傾げる。ベランダを全部新しくする提案までされて、それで解消できなくても責任は負えないとまで言われました。

私が一番大切にしたかったのは、木材を痛めないで、本来の美しさに戻してもらいたいということでした。

雨漏りを引き起こした最初の業者さんは、「灰汁あらいはやらない方がいい。」と開口一番、そう言っていました。今でなら、私はその意味が理解できます。

簡単、便利、短時間で収入をあげる。
何事もそれで回っているこの社会では、木材を痛めないで、時間をかけて本来の色を取り戻す方法は、まったく主流ではありません。臭いがきつく、手では触れることができない強い薬剤を使って、一度だけサッと塗って、はい、木は白くなりました。そんな灰汁あらいばかりが、現在では「灰汁あらい」と呼ばれているそうなのです。

木材の黒くなった部分のシミは、カビなどが含まれています。それらを取り除こうともしないで、表面だけ取り繕ったところで、すぐにダメになってしまうであろうことは明白です。それでは、意味がない。木材の色がおかしくなるだけでなく、そのうちに割れてきてしまうのだそうです。

10軒以上の業者に来てもらって、最終的にやっとこの方法ならばと、お願いすることができたのはこの業者さん。

株式会社 リ・ハッピー

4回ほどの工程を繰り返して、根本的に木材の美しさを蘇らせてくれます。まったく匂いがなく、素手で作業をしているほどです。(2と3工程目は、少し匂いがあるものを使うそうですが。)木材によっても配合を変えたりするので、まさしく経験が物を言う職人さん。簡単ではなく、時間がかかるので、今の普通の若者には不向きということで、自分たちの代で終わりかな、なんておっしゃっています。

これこそ、日本の伝統文化、技術。後世に受け継がれていくべき、大切なもの。日本は、これからどうなっていってしまうのでしょう。

一昔前の和風建築を所有して、見えてくることがいろいろあります。
このような家を建てる大工さんがいなくなっていることはもちろんのこと、維持をするにもちゃんとした職人さんを見つけるのが非常に難しいという現実。

ところで、この灰汁あらいには、3つの流れがあるそうで、一つは明治神宮。そして出雲大社、彼らが受け継いでいるのは伊勢神宮なのだそうです。木と対話する、木霊を大切にする。そこから始まる、「灰汁あらい」。

4回の作業工程の中の、今はまだ1工程目ですが、すでに木の良い匂いが漂ってきています。木が、また本来の呼吸を始めるそう。私も、とっても嬉しいです。

来年からここで始めることは、「癒し」がテーマ。
この空間で、木の香りにも、癒されるに違いありません。今から、楽しみです!